概要
WEB3の社会実装にはいくつかの類型が想定されているが、そのうちの一つにインセンティブ設計を用いた社会的な共同作業がある。誰かの作業が別の誰かの確認/承認を受け、また別の誰かの役に立つ。受益者が支払う料金を「貢献した者たち」が貢献度合いに応じて分配を受ける。それらの一つ一つは小さな営みが何万、何百万と積み重なることでまるで一つの大きなシステムとして稼働し、社会課題を一つ、あるいは複数解決する。近い未来の社会の仕組みの一つとなるべき方法をここで用いて、駐車場のデータベースを構築する。駐車場の情報を登録する、確認する、利用する。これらの3つの行為をNFT、ユーティリティトークン(以下、UT)、ガバナンストークン(以下、GT)を用いることで、貢献の評価、収益配分、権利行使と権利移転などを自動化し、社会的な共同作業により一つの事業を高度に提供する仕組みを構築することを目指す。
はじめに
このシステムはまず日本向けに構築を行う。国、地域、文化によって車を取り巻く課題は大きく異なることが想定されるため、一つのシステムで単純に全世界をカバーできるようにも思えない。そもそも交通に関する法律、ルール、その他社会規範はあまりに異なっている。しかし、課題には一定の共通性もあるはずだ。日本向けとして最初はスタートするが、ゆくゆくは対応する国、地域を増やしていくことを想定し、全体の仕組みを検討する。
解決すべき課題
日本では特に都市部において自分の車で移動することのハードルが高く、非効率である。その要因の最たるものが、駐車場をめぐる問題である。主な問題点は以下の通り。
・駐車場を探すことが困難(というか面倒くさい)
・駐車場の料金体系を事前に知ることが難しい
・停められるスペースがあるかが行くまで分からない
そして、改めて自動運転が主流になった将来のことを考えてみると、その頃までもこれらの問題が残り続けていいわけがない。むしろ、事前に予約ができる、決済が自動で行われる、などの自動運転ならではの新たなソリューションが普及しているべきである。ここでここまでを見渡してみると、現在もさまざまな取り組みが行われているがいずれも決め手に欠ける。その状況は以下の通りである。
・Map系のサービスは場所を示すのみにすぎず、アップされている料金表看板の写真が最新である保証もない。さらに、クレーマーみたいなユーザーが口コミを書いていたりとノイズが多い
・事業者に料金を登録させるタイプの駐車場検索サービスは特に小規模事業者の虚偽や誇大広告がまかり通り、ユーザーが馬鹿を見ている
・信頼のある大規模事業者はそれぞれにMapや料金設定、空車情報などを自社サイトなどで公開してはいるが、得てして周囲の事業者より割高であったり、そもそもその事業者の提供する駐車場のことしか知ることができない
これらの状況から一般の車ユーザーは大きな不便を強いられ、社会の一つの制約になっているとみなすことができる。
PARKI’N COLLECT:駐車場情報DB構築システム
1. 駐車場情報の登録(Collect:コレクト)
駐車場情報を登録するためのWEBアプリ「PARKI’N COLLECT」を構築し活用する。ユーザーは「PARKI’N COLLECT」を起動し、アプリ上のカメラ機能を使用して駐車場の看板を読み取る。GPS情報とともに画像が読み込まれ、AIを活用して料金の計算方法が抽出される。ユーザーは読み取りに誤りがあれば訂正した上で、情報を登録する。数日の確認ののち最終的に承認されると“コレクト"が完了となり駐車場毎の“マスターNFT”がミントされる。ミント後、登録者が”クレイム“することで、当該”マスターNFT“は登録者に割り当てられる
2. 駐車場情報の確認(Confirm:コンファーム)
「PARKI’N COLLECT」上で“コンファーム待ち”(コレクト状態)の駐車場を確認することができる。“コンファーム”は“コレクト”もしくは前回の“コンファーム”から24時間が経過しなければ行うことはできない。“コンファーム”は全部で3回必要(コンファーム(1)、コンファーム(2)といった形でカウントアップする)で、必要な回数の“コンファーム”後に“サブNFT”がミントされ、“クレイム”によって割り当てられる
3. 駐車場情報の更新
「PARKI’N COLLECT」上の情報と実際の駐車場の情報が相違しているとき(料金改定など)は、駐車場情報の更新(リビジョン)を実行することができる。“リビジョン” は“コレクト”~“コンファーム”と同様のプロセスで実行される。一連のプロセス完了後に、リビジョンを実行した者にはマスターNFTが付与され、元のマスタ-NFTはサブNFTに更新される。コンファームを実行した者にはサブNFTが同様に割り当てられる。
PARKI‘N GO:駐車場情報検索アプリ
「PARKI’N COLLECT」で構築したDBを元に駐車場を検索することができるアプリ。500円/月の有料版と広告付きの無料版を提供する。ユーザーは目的地と到着時刻、出発時刻を入力すると、その周辺の駐車場リストを想定料金と距離とともに取得することができる。「PARKI’N COLLECT」による収益はUTに変換され、NFT所有者に分配される。分配は音楽のサブスク・サービスなどと同様に計算される。すなわち、目的地として設定された回数や検索結果にリストされた回数を元に重みづけがされて配分されることとなる。
インセンティブ設計
「PARKI’N」のインセンティブの目的は以下の通り。
・駐車場情報を適切に収集する
→情報の登録者、確認者に報いる
・利用者が十分な利用メリットのあるサービスを開発する
→企画者、開発者に報いる
・利用者を拡大する
→ユーザー増への貢献に報いる
1. 情報の登録者(コレクト)、確認者(コンファーム)への報酬(NFT)
コレクト:マスターNFT、コンファーム:サブNFT の2種類
その駐車場に関する配分売上を、マスターに50%、サブに50%を発行数で割った分割り当てる。NFTはその権利証として機能する。
当初はマスターNFT1点、サブNFT3点が発行され、駐車場の登録が完了する。リビジョンが実施された場合はその回数に応じてサブNFTの点数が増加する。
マスターNFT:100GT サブNFT:20GT としてそれぞれが投票権を持つ。そのため、NFT:GTのトレードを想定した場合に、各設定投票権はフロア価格として機能することが期待される。
2. 企画者・開発者への報酬(GT)
企画者・開発者からなるチームは、サービスのβ版開始から2年間に渡って常にGTによる報酬を受ける。NFTあるいはGTが発行されるたびに、全体の51%となるようにGTが発行される。2年の期間経過後は企画者・開発者へのGT発行を終了する。
3. ユーザー獲得への報酬(GT)
インフルエンサーやメディアを念頭に、ユーザー獲得報酬を設定する。ユーザー獲得はリファラルコードなどによって測定し、自動支払いプロセスを構築する。(チート対策などは別途検討する)
PARKI’N GO :有料ユーザー1件あたり 5 GT/月
無料ユーザー1件あたり 1 GT/月
PARKI’N COLLECT:獲得ユーザーの獲得トークンの5%(NFTをGT換算する)
WEB3システムの設計
全体のイメージは以下の通り。
必要なWEB3システム
※法人ユースを想定すること、運営チームにプレイヤー・機能が複数あることも踏まえ、当初からマルチ・シグを主要機能に搭載し、悪用や誤操作などの意図と異なる動作を防ぐ機構を備える。
1. NFTシステム
ミントのトリガーをWEBアプリを通じて走らせることができる
PARKI’N GOでの使用割合を集計し、NFTを保有しているアドレス宛にUTを配分することができる
特定の条件を満たすと、NFTの種類が変更される(マスター → サブ)
2. NFTトレードシステム
NFT保有者はNFTを他者に販売することができる
最低価格を設定し一定期間を要するオークション方式
即決価格を設定し、買い手を待つ即時購入方式
のいずれかの方法で買い手を募ることができる
3. トレジャリーシステム
利用料が特定口座に入金されると同等額のUTがミントされる
UTを特定のアドレスに投げるとアマギフのコードを返し、UTをバーンする
(該当アドレスでなければ内容が判読できないNFTをミントして引き渡す)
透明性確保のため、トレジャリーの内容をリアルタイム(24時間毎更新)で公開する
4. UT/GTスワップシステム
UT/GTのスワップを提供する(固定レート)
5UT = 1GT
1UT = 1JPY → JPYを入金してUTを発行する仕組みを提供するかは要検討(法令)
5. TOB機能
価格の行き過ぎを抑えながら、流動性を確保するために設定
株式における公開買い付と同様の方法でGTを買い集める方法を提供する
TOBの開始は全ユーザーに通知される
TOBの期間は1か月間固定
開始時点の価格に対して20%以上のプレミアムを必要とする
6. API管理機能
PARKI’N GOも含めて、PARKI’N COLLECTのAPIはGTを総発行数のうち5%以上保有している必要がある
条件を満たしているアドレスはクレームすることによりAPIキーを得ることができる
APIキーは1か月ごとに更新されるため再取得が必要となる
APIの利用にはリクエスト毎にGTを消費する(1GT/100リクエスト)
市場規模と見通し
公開されている調査によると、2020年3月時点で日本の駐車場数は 83,229か所、534万台分。同時点での免許保有者数は8,199万人。ペーパードライバーは30%弱と推計されているため(*1)、5,740万人が全体の市場規模。そのうち、駐車場検索ニーズのある層がターゲットとなる。
*1免許を持っている女性の36.6%は「ペーパードライバー」男性の割合は?
https://news.mynavi.jp/article/20170228-a295/
2年後のPARKI’N COLLECTユーザー数をそれぞれ2.5万、5万、30万と想定したときの各シミュレーションは以下の通り。
想定ユーザー数 25,000 50,000 300,000
月間売上 4,500,000 9,000,000 54,000,000
GT 発行済み 51% 9,715,751 9,870,208 11,158,322
GT理論価格(5年分CF) 25 49 261
マスターNFT年間収益 450 900 5,400
マスターNFT理論価格 4,751 9,424 53,133
API 100リクエスト実質料金 25 49 261
API 100万リクエスト実質料金 250,109 492,391 2,613,296
MicroVisionChainによるWEB3
これらのWEB3システムはMicroVisionChain(MVC)上で構築される。
MVCは高速、低コスト、高機能という主な特徴を持つ。
1. 11,433tx/sを実測で記録した高速な処理能力 *2
VISAは平時に1,700tx/sを処理していると言われ、キャパシティは 24,000tx/sとされている。Mastercardのキャパシティは5,000tx/sとされている。一方、ブロックチェーンを見ると、Bitcoinは7tx/s、Ethereumは25tx/s、Solanaは2,825tx/s、XRPは1,500tx/sなどとなっている。これらを踏まえると現在稼働している中で有力なチェーンとなる。
*2 トランザクション毎秒(TPS): ネットワークの比較
https://phemex.com/ja/blogs/トランザクション毎秒tps-ネットワークの比較
2. 超低コストなガス代
MVCのガス代はネイティブトークンである$SPACEで表される。
実測でTXを刻んだときのガス代は0.00006~0.00100 SPACE。日本円に直すと0.016~0.267円となり、紙で印刷するコストよりも低廉となる。(2024年7月9日現在)
3. スマートコントラクトを内包する高機能なL1チェーン
MVC自身にスマートコントラクトの機能が内包され、さまざまな処理や動作の信頼性を高めながら自動化することができる。
MVC, THE BLOCKCHAIN FOR WEB3
https://www.microvisionchain.com/
以 上